べらぼうめ!ってどういう意味?

時代劇でよく威勢のいい登場人物が「べらぼうめ!」というセリフを口にするのを見たことはありますが、その「べらぼう」っどういう意味なのでしょう?

人を罵る言葉

「べらぼう」という言葉の意味はだいたい以下の通りです。

  1. 程度がひどい。はなはだしい。
  2. ばかげている。
  3. 人を罵る言葉。バカ。たわけ。

どれもヒドい言い方です。
かろうじて「程度がひどい」という意味で、物の値段を「べらぼうに高い」と言えばまだ普通の会話になりますが、「べらぼうめ!」と人に向かって言えばストレートに罵声を浴びせるのと同じことになります。

時代劇では頻繁に耳にする言葉ですが、実際に使ったらすぐ喧嘩になりそうな意味だとわかります。

べらぼうの語源は?

そんな「べらぼう」ですが、そもそも語源はどこから来ているのでしょう?

諸説ある中でもっとも有力視されているのが、江戸時代前期の寛文年間(1660年頃)のことです。
見世物小屋で全身が黒く、頭がとがり、赤く丸い眼球をして、猿のようなあごの奇人が話題になりました。

今となっては、アフリカ系や南アジア系の肌の黒い人を見世物にしていたのだろうと想像されますが、江戸の庶民にしてみれば見たこともない風体に度肝を抜かれ、とんでもない「奇人」が現れたと思いこんでしまったのでしょう。

この奇人のことを便乱坊(べらんぼう)、可坊(べくぼう)と呼び、それが「べらぼう」の元になったと言います。
この世のものとは思えない、そんな意味が込められています。

博打言葉で悪い意味に転用

そんな「べらぼう」に、「とんでもない」とか「ばかげている」という悪い意味が付いたのは、博打うちの間で使われるようになったことからでした。

「べらぼうな手だよ」といえば「そんなバカなことがあるか」といった悪態になり、やがて「べらぼうに高い」等の言い方で江戸中に広がっていったと言います。
「べらぼうな=とんでもないこと」という意味で使われ、「べらぼうめ」といえば「とんでもないヤツ」となりました。

江戸っ子が「べらんねえ(べらんめい)」となまると、このバカ者と言う意味になります。
例えば、江戸っ子気質の気風のいい監督が率いる野球チームのことを「べらんねえ野球」なんて言ったら、ほんとうはかなりバカにしていることになるわけです。

ごくつぶしから来たという説もあり

諸説ある「べらぼう」ですが、もう一つの説は「篦棒(へらぼう)」と書いて「べらぼう」に転じたとするものです。
(ただし、「箆棒」と書くのは当て字、と断言している場合も多々あるので、話半分で聞いてください)

この棒は、米を潰す時に使用するものですが、米をつぶす=穀つぶし(ごくつぶし)の語源という説です。
ごくつぶし(穀潰し)とは、俗語では飯ばかりを食べて何もしないろくでなしと言う意味です。いわば江戸時代のニートですね。
古典落語でもよく出てくる言葉です。

奇人にしても篦棒にしても良い意味には使用されないということには変わりがありません。
ちょっとした笑いのネタとして使う場面もあるかと思いますが、その意味も十分理解しておきたいものです。