キャベジンという名前の由来は?

「食べ過ぎ、飲み過ぎによる胃のもたれに…」
これはテレビCMでお馴染みの胃腸薬キャベジンのキャッチフレーズです。
繰り返し放送されるCMと、覚えやすく個性的な名前で誰もが知っている国民的な胃腸薬として長年親しまれているキャベジンですが、キャベツを連想させるこの名前はどこから来ているのでしょう?

整腸作用をもたらすMMSC

胃腸薬のキャベジンの正式名称(2019年現在)は「キャベジンコーワα(アルファ)」です。
昭和35年(1960年)に「キャベジンコーワ錠」として販売が開始されて以来、「キャベジンコーワS」「新キャベジンコーワS」と変遷を重ね、平成26年(2014年)から現在の名称「キャベジンコーワα(アルファ)」になりました。

胃腸薬「キャベジン」の主な効能は、「食べ過ぎ・飲み過ぎによる胃のもたれを改善する」こと。
この「胃を正常な状態に整えてくれる」整腸薬としての効能は、主にMMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)という成分によるものです。
MMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)は、以前は「ビタミンU」と呼ばれていたビタミン様物質です。

キャベツの搾り汁から発見

MMSCは、キャベツなどの緑色野菜に含まれているアミノ酸の一種です。
抗潰瘍性成分があります。
1940年(昭和15年)にアメリカでキャベツの搾り汁から発見されました。

当初、その物質は「antipeptic ulcer dietary factor(抗消化性潰瘍食事因子)」と名付けられ、ビタミンU(Uはulcerの頭文字)と呼ばれていましたが、後の研究でその成分がMMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)であることが特定されました。
MMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)はビタミン様物質といわれるものですが、ビタミンではなく、前述の通り、アミノ酸の一種です。
現在はビタミンと区別するため(誤解を避けるため)に、ビタミンUではなく、MMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)という名称が使われています。

ちなみに、ビタミン様物質とは、体内においてビタミンに似た重要な働きをするものやその作用を助ける成分のことをいいます。
ビタミンが体内では合成されず、摂取不足から欠乏症が起きるのに対して、ビタミン様物質は体内で合成され、欠乏症が起きません。
また、ビタミンが生命維持やエネルギー代謝の補助のために摂取が必要なものであるのに対して、ビタミン様物質は健康維持や疾病予防の観点から有用な役割を果たすものです。

MMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)には、胃酸の出過ぎを抑制したり(制酸作用)、荒れた胃粘膜を整える働き(粘膜修復作用)があります。
キャベツの他、パセリ、レタスなどにも含まれていて、熱に弱いので、生食での摂取が良いとされています。

キャベツ由来の命名

そうしたMMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)の効用を生かして開発され、昭和35年に、興和株式会社から発売された胃腸薬が「キャンベジンコーワ錠」でした。

「キャベジン」の名の由来は、MMSCが発見されたキャベツに由来しています。
キャベツは英語でcabbage(キャベッジ)。そのcabbageの中に含まれる成分だから、cabbage in=キャベッジイン。
そこから「キャベジン」とになりました。

戦後、経済復興を成し遂げた日本では、食生活の欧米化が進み、胃のトラブルが多くなっていました。
そんな時代に気軽に飲める胃腸薬として、キャベツ由来のMMSCの効き目を生かして発売されたのがキャベジンでした。
誕生から半世紀を過ぎた今でも、日本人のライフスタイルに合わせて改良を重ね、ロングセラー商品として愛されています。

発売元のコーワという会社

「キャベジンココーワ」の発売元は興和株式会社です。
興和株式会社は、名古屋市に本社を置き、繊維、医薬品などのヘルスケア商品、光学関連の商品を製造・販売する非上場企業です。

興和株式会社と聞くとピンと来ませんが、胃腸薬「キャベジンコーワ」をはじめ、「ウナコーワ」や「キューピーコーワゴールド」、「バンテリン」の発売元と言われれば、芸能人やスポーツ選手の出演しているCMがいくつも思い出され、「ああ、あの会社ね」となる人も多いことでしょう。
昭和な人たちには、薬局の店先に置かれたカエルの人形(ケロちゃん、コロちゃん)が懐かしく思い出されるかもしれませんね。

意外なところでは、観光地の展望台等によく設置されている望遠鏡(100円で100秒見られるタイプ)も、多くが興和株式会社の製品です。