ペテンと詐欺、どちらも人を騙す行為ですが、詐欺の方は犯罪に直結するイメージなのに対して、ペテンはその言葉の響きからなんとなくほのぼのとした印象を受けます。
両者の間に違いはあるのでしょうか?
言葉の響きから来る印象の差は大きい
どちらも騙すことには変わりがないので、実質的に違いはないと言ってしまえばそれまでですが、敢えて違いをあげるとすれば、字面からくる印象の違いが大きいといえるのではないでしょうか。
詐欺師と書くと、文字通り、計画的に人を騙し欺いて財産をかすめ取っていくダークな世界の住人がイメージされます。
結婚詐欺やオレオレ詐欺のように、行為そのものが悪意に満ちている場合に詐欺と表現するのがふさわしいように思えます。
一方、ペテン師と書くと、なんとなくユーモラスな雰囲気を漂わせる親しみやすそうな人物に思えてきます。
ペテンにかける、という表現からも、ペテン師は舌先三寸で相手を騙すけれど、騙された方も間が抜けている、騙された側が後で気づいて地団太踏んで悔しがる、そんな昔のコメディ映画のような牧歌的な空気が感じられます。
ただ、前述の通り、どちらも人を騙す行為であるのは変わりがないので、どちらが良い悪いという話ではありませんね。
ペテンの語源は中国語
ペテンの語源は中国語の「繃子」(bengzi=ペンヅィ)だと言われています。
中国(その頃は「清朝」の時代ですが)では俗語で「詐欺」を意味する言葉として用いられていたといいます。
それが明治初期に日本でも使用されるようになり、日本人が言いやすいようにペンヅィからペテンに転訛した、というのが定説です。
中国からはいろんな文物が日本に入ってきていますが、ペテンも中国に源を発する言葉だったとは驚きです。
これは決して皮肉ではありませんが、中国は今も昔も日本のはるか先を行く「ペテン」大国だといえるのでしょうね。
そういえば、司馬遷の「史記」にも、言葉巧みに政策を説いて権力者に取り入ったり一国の宰相にまで成りあがった弁舌家の紀伝が多く記されていますが、舌先三寸で世を渡り歩いて歴史に名を残した彼らこそ古代のペテン師そのものだといえるのかもしれません。
ペテン師という言葉の響きにどこかユーモラスで愛すべき人物的な香りが漂っているのも、そこに、日本が古くから模範にしてきた古代中国の歴史上の人物の姿が重なりあって見えているからなのかもしれません。
やはり中国4千年の歴史には奥深いものがあります。