リテラシーってどういう意味?

「フェイクニュースが流布する昨今では、メディアリテラシーが求められている」とか「ネット・リテラシーが足りない」とか、近年やたらと目にする機会の多い「リテラシー」という言葉ですが、そもそもリテラシーってどういう意味なのでしょう?
デリカシーの一種?なんて誤解している人も多いかもしれませんね。

語源は単なる「読み書き能力」のこと

英語で書くと literacy 。これは直訳すると単なる「読み書き能力」のことです。
日本語では古くから「識字」として使われている言葉です。
「江戸の庶民の識字率は高かった」という時に使いますね。

英文では、いまでもliteracyはこちらの「識字」、すなわち読み書き能力の意味でも使われる言葉です。

簡単にいえば深い知識・理解力

英語では、本来の「読み書き能力」から派生して、様々な分野での深い知識や教養、理解力という意味でも使われます。

目新しい言葉ではなく、古くから使われている言葉なので、ITに関して「デジタル・リテラシー」、投資に関して「金融リテラシー」のように適用されるのも英語の世界では自然な流れなのです。
日本語でいえばコンピューター関連の知識、金融に関する知識、程度の表現です。

しかし、literacyという英単語は日本の中学英語ではほぼ教わらない言葉なので馴染みがなく、意味を理解できなかったからなのか、そのまま「リテラシー」というカタカナ言葉として導入されました。
そのため、さも最先端のビジネス用語であるかのように使われることになりました。

耳慣れない横文字に弱い癖

日本語では既に昔から「見識がある」という言い方でそれを表していたので、それをそのまま転用すればいいのですが、やたらと横文字を使いたがる悪い癖があります。
クライアントとか、エビデンスとか、ダイバーシティとか…。

どこかの都知事はアウフヘーベンなんて死語まで繰り出して横文字言葉を並べ立てていましたっけ(笑)。

ネット用語としてのリテラシー

日本語で「見識」「知識」と言えば済むことをわざわざ横文字にしたのが日本版「リテラシー」の始まりですが、あっという間に広まったのはネットでの使われ方が影響しています。

「新聞記者のくせにメディア・リテラシーがない」とか、「Twitterの情報を鵜呑みにするとか、ネット・リテラシーなさすぎでしょ」という表現で、いわゆる「情弱(情報弱者)」を小馬鹿にするのに便利な用語として多用されています。

本来は「そんなことも知らないのか」という見下す気持ちが込められているのですが、それを「リテラシーが足りない」と言うことで若干柔らかく表現して、婉曲に貶めるという使い方がされています。

ストレートに意味が伝わらないカタカナ言葉の特性を活かした使用例といえますね。

耐性を身につけよう

現代用語としての「リテラシー」には、知識・教養に加えて、「耐性」という意味も含まれています。

例えば、「フェイクニュースが流布する昨今では、メディアリテラシーを持とう」と表現した場合、ニュースの本質を見極める目を持つ同時に、テレビや新聞、ネットニュースの情報といえどもすべてが真実を伝えているわけではないので、メディアの情報操作に対する耐性を身につけよう、という意味がこめられているといえます。

「投資するのなら金融リテラシーを身につけよう」というと、投資情報を集めるだけではなく、「絶対儲かる!」という甘い言葉に騙されない耐性が必要である、という意味でもあると解釈できます。

いいね!をする前に考えること

ネットの広がりとスマートフォンの普及により、昔に比べて多くの情報に接する機会が増えました。
飛び交う情報は、文字通り玉石混交。石ころみたいに役に立たないだけならまだしも、中には宝石のような顔をして近寄ってきたくせに実はとんでもない食わせ物だったりすることもあったりして、油断も隙もあったものではありません。

そんな食わせ物に貴方は「いいね!」してしまったことはありませんか?

本当は偽物なのに、真面目なニュースのふりをしてスマートフォンの画面に表示されるフェイクニュース。
貴方が何気なくした「いいね!」が、フェイクニュースを拡散する力となって、さらなるフェイクを撒き散らしていくことになる、と想像してみてください。
チェーンメールのようにネットの世界を駆け巡るフェイクニュースの一翼を貴方の「いいね!」が担っているとしたら恐ろしい話です。

「いいね!」をする前に少し立ち止まって考えてみるだけでも、貴方のネット・リテラシーは高くなるはずです。

リテラシーはあってもデリカシーのない発言

ちなみに、メディア・リテラシーとかネット・リテラシーというように、何かしらの言葉をつけて使われるリテラシーですが、単に「あなたはリテラシーが低い」という言い方をすると、あなたは見識が低い、すなわち「あなたはバカだ!」と相手にストレートに言い放つ表現になってしまいます。

いくら心の中で思っていても、他人に面と向かって「あなたはバカだ!」と言うのはあまりにデリカシーがない発言なので注意したいものです。